刑事事件の被害にあった場合について
刑事事件 - 刑事事件の被害にあった場合
被害に遭った事件の犯人に対して,損害賠償の請求ができます(損害賠償命令の制度)。
民事訴訟として,犯人を被告として損害賠償請求訴訟を提起することは,これまでもできたところですが,刑事事件が係属している地方裁判所が,刑事事件の訴訟記録を証拠として取り調べ,原則として4回以内の審理により損害賠償命令の決定を出す制度が,平成20年12月1日から,新たに施行されることとなりました。
この制度の対象となる犯罪は,(1)故意の犯罪行為により人を死傷させた罪,(2)強制わいせつ,強姦,準強制わいせつ,準強姦の罪,(3)逮捕及び監禁の罪,(4)略取誘拐,人身売買の罪,(5)(2)~(4)の犯罪行為を含む犯罪,(6)これらの未遂罪に限定されており,過失犯や財産犯(窃盗,強盗等)は含まれていません。
この制度を利用するためには,刑事事件の弁論が終結される前に,申立をする必要があり,実際の審理は,刑事事件について有罪判決の言い渡しがなされた後,直ちに第1回期日が開かれることになっています。
この制度では,職権で刑事被告事件の訴訟記録が取り調べられることに最大のメリットがあり,申立に理由があるときには,損害賠償を命じる決定がなされます。
これに対し,被告が,損害賠償命令の決定の送達または告知を受けた日から2週間以内に異議の申立をした場合には,通常の民事訴訟手続に移行します。手続のフローチャート図
被害に遭った事件の刑事裁判に関与することができます(犯罪被害者の刑事訴訟参加)。
平成20年12月1日から,被告人の刑事事件の公判期日に出席し,被告人の情状証人に対して反対尋問をしたり,被告人に対しても質問をし,最後には,検察官の論告・求刑の後,事実認定や量刑について意見を述べることができます。
この制度の対象となる犯罪は,(1)故意の犯罪行為により人を死傷させた罪,(2)強制わいせつ,強姦,準強制わいせつ,準強姦の罪,(3)業務上過失致死傷,自動車運転過失致死傷の罪,(4)逮捕及び監禁の罪,(5)略取誘拐,人身売買の罪,(6)(2)~(4)の犯罪行為を含む犯罪,(7)これらの未遂罪に限定されています。
また,この制度を利用するためには,予め検察官に対し,刑事事件の手続への参加を申し出る必要があり,最終的には,裁判所が,被告人または弁護人の意見を聞いた上,犯罪の性質・被告人との関係・その他の事情を考慮し,相当と認めるときは,決定で当該被害者の参加を許可します。
被害者は,自らの資力(現金,預金等の流動資産の合計額)から,犯罪行為を原因として3月以内に支出することと認められる費用の額を控除した額が150万円未満であれば,国選被害者参加弁護士の選定を法テラスを経由して裁判所に請求することができるようになり,その費用を法テラスに負担して貰えることとなりました。
犯人の出所情報等を教えてもらうことができます(被害者等通知制度)。
犯人(加害者)が実刑判決を受けて確定すると,刑務所に服役することになります。被害者は,検察庁に申し出ることにより,以下の情報の通知を受けることができます。
(1)検察官が通知する事項
イ 収容されている刑事施設の名称等の事項
ロ 刑の執行終了予定時期及び受刑中の刑事施設における処遇状況に関する事項(おおむね6か月ごとに通知)
ハ 仮釈放または刑の執行終了による釈放に関する事項及びこれに準ずる事項(釈放された年月日及びその事由等)
(2)地方更生保護委員会が通知する事項
イ 仮釈放審理の開始に関する事項(仮釈放の審理を開始した年月日,審理を行う地方更生保護委員会の名称等)
ロ 仮釈放審理の結果に関する事項(仮釈放を許す旨の決定年月日等)
なお,仮釈放された加害者は,保護観察に付されるため,以後は③の通知を受けることができるようになります。
(3)保護観察所の長が通知する事項
イ 保護観察の開始に関する事項(保護観察開始年月日及び保護観察終了予定時期等)
ロ 保護観察中の処遇状況に関する事項(おおむね6か月ごとに通知)
ハ 保護観察の終了に関する事項(保護観察が終了した年月日等)
(2)の通知に関連して,被害者は,地方更生保護委員会が行う加害者の仮釈放の審理において,意見等を述べることができるようになりました。
また,犯罪の動機や組織的背景,犯人との関係,犯人の言動などに照らして,被害者が再び被害に遭う恐れがあって,転居したり,犯人との接触を避けるための措置をとる必要があると認められるときには,検察官の判断により,犯人の釈放後の住所についても通知してもらえる場合があります。
犯罪被害者に対する補償制度があります(犯罪被害者等給付金制度)
人の生命又は身体を害する犯罪行為により,不慮の死を遂げた者の遺族又は重傷病を負い若しくは障害が残った者に対して,国が犯罪被害者給付金を支給する制度です。
適用される犯罪は,日本国内において行われた人の生命又は身体を害する罪であり,故意犯に限定されます。
被害者又は遺族が労働者災害補償保険等の保険金等を受領した場合には,犯罪被害者等給付金の支給額が,減額ないし不支給となる場合もあります。犯罪被害者等給付金制度は,最終的にその他の法令による救済がなされない場合に初めて適用されることが予定されたものです。
給付金の種類としては,
(1)遺族給付金:被害者が死亡した場合の給付金
(2)障害給付金:後遺障害が残った場合の給付金
(3)重傷病給付金:全治1か月以上の傷病につき3日以上の入院を要した場合の給付金(実費+休業損害も考慮されます)
の3種類があります。
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