借金を整理するためには...
債務整理 ‐ 借金を整理したい
貸金業者からの厳しい取立を止めさえることはできるのでしょうか?
弁護士が借金の整理について依頼を受けたことを貸金業者に通知(受任通知)をすることにより,貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」と言います。)によって,貸金業者は,直接,債務者に取立ができなくなります。そして,取立が止まることにより,収入を借金の返済にではなく,生活費に使うことができるようになって,生活に余裕が生まれてきますが,その間に,借金の整理の方針を決定する必要があります。
なお,貸金業の登録を受けていない,いわゆるヤミ金業者は,もともと違法な集団で,弁護士が受任を通知しても,取立を止めることはなく,債務者のみならず,予め債務者から聞き出した債務者の勤務先や配偶者や親戚やその勤務先にまで脅迫的な厳しい取立をする業者もあります。このような場合,弁護士は,直接ヤミ金業者に電話を掛けて,改めて違法行為をしないよう警告すると共に,無登録で貸金業を営んでいること自体が貸金業法に違反し,刑事処罰の対象となる行為ですので,悪質な事案については,警察に刑事告訴していくことになります。また,ヤミ金業者への返済口座については,不正請求口座として金融機関や警察に通報し,口座の凍結を求めていきます。
業者が貸金業の登録を受けているかどうかは,金融庁のホームページで確認することができます。
現在の自己の正確な債務の額を把握するためには,どのようにしたらよいのでしょうか?
債務整理の方針を決定する大前提として,現在,どの程度の債務が存在しているのかを把握する必要があります。
そのため,債務整理を受任した弁護士は,各債権者に受任通知を書面で発送すると共に,債務者のこれまでの全ての取引履歴の開示(いつ,いくら借り入れをして,いつ,いくら返済したか)を求めます。
これまで利息制限法に規定する利率(元金10万円未満の場合は年利20%,元金が10万円以上100万円未満の場合は年利18%,元金が100万円以上の場合は年利15%)を超える利息を支払っている場合は,その超過利息を元金として弁済したものと見なして,再度,これまでの全ての取引を計算し直していきます。これを,利息制限法による引直し計算と言います。その結果,残債務の額は相当程度圧縮されますし,さらには,既に元金を完済した結果となり,その後の支払いは過払い金として返還請求していくことも可能となります。
過払い金の返還を請求するためには,どのようにしたらよいのでしょうか?
まずは,貸金業者との間で和解交渉をし,和解が成立する場合には,任意に返還を求めていきます。
和解交渉が決裂した場合には,不当利得金返還請求訴訟を提起していきますが,訴訟の継続中に,判決に至らなくとも,債務者側により有利な条件で和解が成立する場合もあります。
この過払い金の返還請求訴訟に関しては,最近,重要な最高裁判所判例が次々と出ています。
ホットな論点としては,取引の途中で完済により空白期間がある場合に,(1)その空白期間の前の取引について既に過払い金が発生している場合,これを空白期間後の貸付に充当することができるか(充当できない場合,過払い金返還請求ができる総額はより少なくなり,また,空白期間より前の過払い金については,時効消滅している可能性が高くなります。),(2)過払い金返還請求権の時効はいつから起算されるかという問題があります。
個人の債務整理には,どのような方法があり,それぞれの方法のメリット・ディメリットは?
【任意整理】
各債権者に対し,利息制限法による引直し計算後の残債務元金を分割弁済していく方法です。
メリット | ディメリット |
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●利息制限法による引直し計算により,返済すべき債務額が減額される可能性があります。 ●分割弁済中の利息(将来利息)は,発生させず,元金のみを分割弁済していくという条件で和解を成立させます。 ●不動産や生命保険や初度登録後6年が経過していない車両などの資産がある場合,これら資産を手放したり,解約する必要はありません。 | ●弁護士が介入した情報は貸金業者やクレジット会社が加盟する信用情報機関に登録されるため,当分の間,自己名義でクレジットカードを使用したり,融資を受けることはできなくなります。このディメリットは,他の方法によっても,同様に発生します。 ●引直し計算後の残債務額総額を返済する能力がある場合にのみ利用することができる方法です。 ●当事者間の任意の話し合いによるため,話し合いに応じない貸金業者に対する強制力がありません。 |
【特定調停】
裁判所に申立をし,裁判所の調停委員会の仲介により,貸金業者と債務者との間で債務返済の合意を取り付ける制度です。残債務については,利息制限法による引直し計算により確定させます。
メリット | ディメリット |
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●利息制限法による引直し計算により,返済すべき債務額が減額される可能性があります。 ●裁判所を通した手続であるため,債権者が給料などの差し押さえをしてきた場合,この強制執行の手続を中断させることができます(この効果は,個人再生,破産においても同様です。)。 ●債務者本人が自ら裁判所に特定調停手続を申し立てた場合,最も安い費用で手続を進めることができます。 | ●合意が成立しない貸金業者との間では,依然として債務が整理されないまま残ってしまいます。 ●弁護士が介入した情報は貸金業者やクレジット会社が加盟する信用情報機関に登録されるため,当分の間,自己名義でクレジットカードを使用したり,融資を受けることはできなくなります。 |
【個人再生】
裁判所に申立をして,再生計画の許可を受け,担保権付きの債務を除き,債務総額が1,500万円以下の場合は,債務を5分の1にまで圧縮(最低額は100万円),債務総額が1,500万円から3,000万円までの場合は,300万円の定額,債務総額が3,000万円を超え5,000万円までの場合は,債務を10分の1にまで圧縮してもらい,これを原則3~5年間で分割弁済していく制度です。
メリット | ディメリット |
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●住宅資金特別条項を利用し,住宅ローンは,原則として従前どおり支払うことにより,住宅を手放す必要がありません。 ●また,生命保険を解約するなど,資産を処分する必要もありません。 ●さらに,他の債務を原則5分の1にまで圧縮(但し,最低でも100万円を下ることはできず,また,自己の清算価値(資産)以上の返済はしなければなりません。)し,これを3~5年の間に分割弁済していくことを条件に,残債務を免責して貰うことができます。 ●再生計画案に反対の債権者がいても,債権額等において過半数に達しなければ,再生計画案が認可され,反対債権者に対しても,強制力を持ちます。 ●借金の原因が遊興費など,自己破産では免責が認められない可能性がある場合でも,この制度を利用することができます。 | ●弁護士が介入した情報は貸金業者やクレジット会社が加盟する信用情報機関に登録されるため,当分の間,自己名義でクレジットカードを使用したり,融資を受けることはできなくなります。 ●将来にわたって給料などの定期的かつ継続的な収入があり,再生計画案に従った返済ができることが前提となりますので,専業主婦やほとんどアルバイトにいかないフリーターなどは利用できません。 そのため,再生の申立の前から,将来の弁済額相当額を毎月積み立てることにより,再生計画案の履行可能性を証明していく必要があります。 ●手続が複雑であり,時間もかかるため,弁護士に依頼することをお勧めします。 ●官報に住所と名前が掲載されます。 ●不動産に住宅ローン以外の債権を担保するための抵当権が設定されている場合には,住宅資金特別条項を利用することができません。 |
【自己破産】
裁判所に申立をして,免責の許可決定を受けた場合には,債務が消滅する制度です。
メリット ディメリット ●債務の返済能力が全くない場合に利用することができ,免責許可決定を受ければ,債務を全く返済せずとも,債務を消滅させることもできます。 ●最低限の生活資材を除き,不動産などの資産は手放す必要があり,生命保険契約も,解約返戻金が20万円を超える場合には,原則として,解約することが求められます(なお,これら資産は,債権者に対する配当に充てられます。)。
●破産原因によっては,免責が認められない場合もあります。
●弁護士が介入した情報は貸金業者やクレジット会社が加盟する信用情報機関に登録されるため,当分の間,自己名義でクレジットカードを使用したり,融資を受けることはできなくなります。
●官報に住所と名前が掲載されます。
これら債務整理のいずれの方法を選択するかについては,毎月の返済可能金額と利息制限法による引直し後の残債務額とを比較し,概ね3年ないし5年以内に返済可能か否かによって,任意整理・特定調停か個人再生・自己破産の方法かを選択していくことになります。また,個人再生を選択するか,自己破産を選択するかについては,住宅を残す必要があるか,将来にわたり安定した収入があるか,免責不許可事由があるかなどの事情を考慮しながら,最もベストな方法を選択していくことになります。
なお,これら債務整理の方法は,借金を減額ないし消滅させる便利な制度と認識してもらっては困ります。借金問題から立ち直り,自立的な生活を再建していくために,収入の中で生活をするという大原則のもと,家計管理をきっちりとし,また,借金の原因を見つめ直し,再び借金を繰り返さないように意識を改革したり,具体的な方策を検討する必要があります。そのため,当事務所では,任意整理や個人再生の分割弁済についても,債務を完済できるまで返済口座を管理し,債権者と債務者との仲介役をつとめていきます。
自己破産する場合,全ての資産を失ってしまうのでしょうか?
(1)預貯金,(2)保険解約返戻金,(3)自動車,(4)敷金・保証金,(5)退職金債権,(6)電話加入権,(7)過払金については,各項目の金額が20万円以下である場合や,現金と合計して99万円を超えない場合には,原則として自由財産として拡張され,債権者への配当に回されることなく,債務者が自己の生活費として自由に使用することが可能です。
自由財産拡張の運用基準については,各裁判所によって異なりますが,大阪地方裁判所で運用している基準が参考になります。
債務整理を弁護士に依頼する場合,どの程度の費用がかかるのでしょうか?
当事務所においては,任意整理については,債権者1社あたり3万円の手数料,自己破産及び個人再生については20~30万円前後の手数料を申し受けております。
法テラスの民事法律扶助の援助要件を満たす場合には,法テラスに弁護士費用を立て替えて貰うことができ,この場合,毎月例えば5,000円や1万円ずつの分割弁済が可能です。
なお,債務整理に関する法律相談は無料で応じます。
会社の債務整理の方法としては,どのような方法があるのでしょうか?
債務整理の方法 | や り 方 | 特 徴 |
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任意整理 (裁判外の清算型債務整理) | 裁判所に申立をするのではなく,弁護士が,破産手続における申立代理人の仕事と管財人の仕事を併せて行う方法です。 具体的には,債権者に通知を出して,債権の届出をしてもらい,債権額を調査して確定するとともに,破産者の財産を管理・回収・換価して配当財源を作り,各債権者に配当を実施して任務を終了します。 | ●正式に破産を申し立てて破産手続の開始決定を得るためには,将来管財人の報酬等,破産手続を進めるための費用として,裁判所が要求する金額の予納金を納める必要がありますが,この予納金を準備できない場合に用いる方法です。 |
破 産 (裁判上の清算型債務整理) | 裁判所に破産の申立をし,これを受けて,裁判所が破産手続の開始決定をするに際し,破産財団の換価・配当のために,破産管財人が選任されます。管財人は,裁判所の監督の下,債権額を調査して確定させるとともに,破産者の財産を管理・回収・換価して,配当財源を作り,各債権者に債権額に応じた配当を実施する任務を負います。 | ●予納金を納める必要があります。 ●裁判所の監督のもと手続が進められるため,債権者の目から見た公正さが維持されます。 |