賃貸借をめぐる紛争について
一般民事事件-賃貸借をめぐる紛争
賃料を滞納している借主との契約を解除したいのですが
貸主が賃貸借契約を解除するには,①貸主が借主に対し,相当の期間を定めた上で,賃料を支払ってくれと事前に催告すること,②借主がその期間内に賃料の支払いをしないこと,③貸主が借主に対して,賃貸借契約を解除する旨の意思表示をすること,④貸主と借主との信頼関係が破壊されたと認めるだけの特段の事情が認められることの4要件を満たす必要があります。
例えば賃料の滞納期間が1か月のみでは,④の要件を満たさないと判断される可能性が大です。また,建物の賃貸借契約より土地の賃貸借契約の方が,より契約を解除しにくい傾向が認められます。
立退料とはどのような場合に支払う必要があるのでしょうか?
建物賃貸借契約の期間が満了する際に,その更新を拒絶する場合や,賃貸借期間の約束がない場合に,賃貸借契約の解約を申し入れて,建物の明け渡しを求める場合において,あくまでも借主が明け渡しを拒否している場合には,「正当事由」が必要とされています。
この「正当事由」の典型は,貸主において,当該建物を自己使用したいという事情がありますが,他方では,借主も,例えば,当該建物で商売をしている場合,当該建物を明け渡した場合にはその場所で商売ができなくなるわけですから,借主の営業利益を保証する必要もあります。このような時に,貸主が借主に立退料を支払うことにより,正当事由が補強され,貸主の明渡請求が正当化される場合があります。
どの程度の立退料を支払う必要があるかについては,事案により様々ですので,ご相談下さい。
建物に修繕費用が発生した場合,誰がその費用を負担する必要があるのでしょうか?
修繕義務は貸主が負担するというのが原則的な考え方です。
しかし,借主が修繕義務を負うとの特約が賃貸借契約にある場合においては,借主は,通常の使用による範囲内(経年変化,自然の劣化・損耗によるもの)の破損等の修繕費用を負担する義務を負いますが,それが大修繕の場合には,やはり貸主がその費用を負担する義務を負います。壁のクロスや床カーペットの全面張替,建物の基本的な構造に影響するような修繕は,多額の費用もかかり,大修繕とされる場合が多いと思われます。
また,借主の不注意による破損等の修繕費用は,借主が負担する義務を負います。
賃料の増額(減額)請求をしたい場合,どのような方法があるでしょうか?
賃料の相当額については,①租税などの負担の増加,②土地や建物の価格の上昇その他経済事情の変動,③近隣の同種物件の賃料との比較を総合的に考慮して決定していくことになります。
具体的な手続については,調停前置主義がとられているため,まずは,調停を申し立て,調停不成立に終わった場合には,訴訟を提起していくことになります。
転勤の期間中のみ自己の家を他人に貸したい場合,どのようにしたらよいのでしょうか?
公正証書により,定期借家契約を締結することになります。その際,貸主は,借主に対し,契約の更新はなく,期間満了により契約が終了することを予め書面で説明する必要があり,また,期間満了の6ヶ月前には,期間満了により契約が終了することを通知する必要があります(借地借家法38条)。定期借家契約の場合,更新拒絶や解約申入に対して,「正当事由」が必要とされません。
借主が家賃を滞納した上,荷物を残したまま行方不明となった場合,どのように対処したらよいのでしょうか?
正式な対処方法としては,賃貸借契約を解除した上で,建物の明渡と未払賃料を請求する訴訟を提起し,訴状の送達については,公示送達の方法を申し立てます。その結果,借主が法廷に出廷せず,欠席判決によって請求どおりの判決の言い渡しを受けることになりますが,その後,借主が部屋に残していった動産に対して差押競売をなし,その動産を処分した代金を未払賃料に充当するという方法で,荷物を処分することができます。